平成13年第4回定例会 一般質問
〇副議長(橋本辰二郎君) 一番谷村孝彦君。
〔一番谷村孝彦君登壇〕
〇一番(谷村孝彦君) 初めに、首都圏FEMAについて伺います。
危機管理の基本は、強力な指揮系統のもとで、さまざまな行政組織を有機的に運用することにあります。そのモデルとして参考となるのが米国連邦緊急事態管理庁、いわゆるFEMAであり、我が党は平成七年以来、機会あるたびに東京版FEMAの創設を訴えてきました。
本年九月一日に実施された総合防災訓練で、初めて米軍横田基地が活用され、都庁、警察、消防、自衛隊組織も含め、各組織間の有機的連携が試みられました。その後、九月十一日には米国同時多発テロが発生し、我が党は、第三回定例会において、東京版FEMAを設置すべきであると提案をしたところであります。
これに対して石原都知事は、まだFEMAなるものについて精通しておりませんので、今後参考にして七都県市の首長さんたちにも建言すると答弁し、去る十一月七日の七都県市サミットで首都圏FEMAの創設を提唱され、さらに、本定例会における所信表明においても、公明党提案のFEMA創設について述べられたことは、高く評価するものであります。そこで、首都圏FEMA創設に向けた知事の決意を伺います。
また、首都圏FEMAの確立を目指し、当面の課題となるのは、一つ、七都県市にまたがる災害協定の見直し、二つ、災害時における消防、警察のバックアップ体制の見直し、三つ、自衛隊との連携強化、四つ、七都県市の災害対策本部のネットワーク化、五つ、常設の事務局並びに拠点施設の設置などが挙げられます。以上五点についての率直な見解を伺います。
次に、福祉改革について伺います。
地域での自立を支える利用者本位の新しい福祉を実現するには、高齢者や障害者など、だれもが住みなれた地域で自立した生活ができる社会をつくり、必要なときに必要な福祉サービスを選択できる仕組みをつくることが重要であります。そのためには、選択できる福祉サービスの量と質を拡充するとともに、多様な事業者が参入し、サービスの質の向上を競い合ってこそ、質の高い福祉サービスが提供できると考えます。
そこで伺います。
第一に、痴呆性高齢者グループホームなど、地域でのケアつき住宅を早急に整備する必要がありますが、国の制度では、社会福祉法人には補助制度があるのに、民間企業にはありません。
そこで、このような参入障壁をなくし、グループホームなどに民間企業の参入を促進するために、都は積極的な支援をすべきであります。所見を伺います。
第二に、利用者が自分のニーズに最もふさわしいサービスを選択できるようにするためには、サービスの内容や質を比較できる、信頼の高い情報が必要です。それには、専門的な知識を持つ第三者が、客観的に外からサービスの内容や質を評価し、その評価結果を利用者に広く情報提供する仕組みを早急に構築していかなくてはなりません。
利用者保護のための福祉サービスの第三者評価並びに情報提供システムの構築について、所見を伺います。
第三に、知的障害者や痴呆性高齢者の方々が抱えている問題や相談は、福祉サービスの利用から金銭管理の問題、また、相続や契約トラブルなど、さまざまな問題にまたがっています。しかし、これらの問題に総合的に対応するシステムがありません。
利用者のトラブルを未然に防止し、問題が起きた場合には迅速かつ的確に対応するために、ワンストップとなる総合相談体制を、都の支援のもと、身近な自治体である区市町村に設置する必要があると考えます。都の支援策について伺います。
次に、多摩の市外局番について伺います。
この問題については、これまでも長年にわたり都議会で議論されてきたところであり、我が党におきましては、私の前任である萩谷勝彦前議員が、昭和四十二年以来一貫して議会で取り上げ、町田市選出の谷口卓三前議員も同様に取り組んできたところであります。
そうした流れを受け継ぎ、私は、去る九月二十八日の総務委員会において、多摩の市外局番を統一化し、新たに〇四化のための検討委員会の設置を提案いたしました。
現在、多摩三十市町村の三分の一を超える十一市で、同一市内に市外局番が複数存在しており、中には三つや四つに分かれている市もあります。また、同じ市外局番の〇四二や〇四二四番であっても、NTTの単位料金区域の関係から、通話には市外局番からかけ、市外通話料金を払わないと通じないところが多くあるのが実態であります。
我が党の提案を受けて、都は、早速、去る十一月十五日、都と多摩の市町村の担当者とNTT東日本の担当者を交え、初会合を開いたところであり、迅速な対応を高く評価するものであります。
そこで、多摩全域を六つの料金区域に分割し、多摩の市外局番統一化の障害となっている単位料金区域制度について伺います。
本格的な情報通信時代を迎え、インターネット電話による国際通話料金がわずか三分十円という時代となり、また、全国どこでも三分二十円という通信会社も登場している今日であります。それに比べ、多摩都民は、同一市内でも市外通話料金を払わなければならないという理不尽な状況に置かれているのであります。
旧郵政省の電気通信番号に関する研究会でも、高い通話料金の原因である単位料金区域制度の問題点が指摘されており、この際、多摩の市外局番の統一化のために、単位料金区域の一本化を都として強力に働きかけるべきであります。都の見解と対応策について明確な答弁を伺います。
次に、多摩都市モノレールについて伺います。
多摩都市モノレールは、昨年一月に、多摩センターから上北台間の十六キロメートルが開業しました。これにより南北方向の交通アクセスが格段に強化され、地域の交通機関として親しまれるとともに、沿線地域の活性化に大きな役割を果たしております。
こうした中、利用者数も、採算ベースがとれるといわれる十一万六千人の目標に対し、最近ではその約九割の十万人に達していると聞いております。これまでの利用者拡大や営業収入拡大のための対応について伺います。
また、沿線の五市が、平成十一年度から十五年度までの五カ年で、総額七十五億円の無利子貸し付けを行うなど、経営基盤の強化が図られ、上北台から箱根ヶ崎への次期整備路線の事業化が現実味を帯びてきたと考えます。この次期整備路線は、運輸政策審議会でも明確に位置づけられており、それに先行して、沿線では土地区画整理事業が取り組まれるなど、導入空間確保に向けた着実な努力が行われております。
上北台から箱根ヶ崎までの多摩都市モノレールの延伸事業化に向けて、地元の要望にこたえるべきであります。見解を伺います。
次に、多摩地域の保健所改編について伺います。
都は、十月二十五日、多摩地域の保健サービスの再構築として、現在十二ある多摩の保健所を七つに減少させる案を発表しました。ある市長が市議会に報告をしたところによりますと、衛生局の説明を受けた東京市長会では、地方分権の流れだといって、自分たち、都で決めてしまって、我々市をパートナーと思っていないとか、市町村に何から何まで押しつけて、非常に高圧的で乱暴であるなど、大変な反発があったようであります。今月に入っても、多摩の市長が保健所改編などを取り上げ、多摩軽視であると都政に対して強い懸念を示していることが相次いで報道されております。
そこで伺います。
第一に、都はこうした多摩の各自治体の反応をしっかり受けとめ、信頼回復に努めるべきであります。見解を伺います。
第二に、多摩地域の保健サービスの再構築は、地域住民にとってどのようなメリットがあるのか。
第三に、二次保健医療圏に一カ所の保健所を配置するという案は、多摩の保健所数の削減を意味します。しかし、これまで衛生局長は、我が党や東大和市に対して、村山大和保健所の早期建設に向けて努力すると述べてこられました。今回の都の案と矛盾する従来の発言をどう説明するのか。東大和市議会では、超党派の全議員が署名を行い、村山大和保健所の存続と早期本建設を求める意見書を決議する予定と伺っております。村山大和地域の住民が納得できる明快な答弁を求めます。
最後に、電子投票について伺います。
さきの臨時国会で、地方選挙に電子投票を導入する、いわゆる電子投票法が成立しました。現行制度は、投開票事務に多くの人手や費用がかかりますが、電子投票制度は、これを効率化する切り札として、総務省を中心に研究が進められ、広島などのように導入を目指している自治体もあります。電子投票制度は、セキュリティーなど検討しなくてはならない課題はありますが、多くのメリットもあり、これからの制度として注目されています。
そこで、都選挙管理委員会の電子投票制度に対する評価と現在の調査検討状況を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
〇知事(石原慎太郎君) 谷村孝彦議員の一般質問にお答えいたします。
首都圏版FEMAについてでありますが、私は、実は九月十一日にワシントンにたまたまおりまして、その機能について目の当たりにし、非常に評価を高くいたしました。当時、二千機を超す飛行機がアメリカじゅうを飛び回っておりましたが、FEMAの発動で、ほとんど短時間に強制的にダイブアウトをしまして、テロを防いだといいましょうか、そういう措置が非常に早かったのは、非常に印象的でありました。
一方、我が国では、縦割り行政のために、非常に統一的、機能的な行動をとる体制が整備されておりません。まして前回の各省庁の統廃合で、また一層、本当は統一されなくちゃいけない機能が違う省庁に分割された形になりまして、当事者たちは非常に懸念を抱いておりますが、いずれにしろ、国を待っておられませんから、何といっても、国家の頭脳部分、心臓部分でありますこの首都圏を、テロを含めた危機から守るためにも、そういう組織というものは必要だと思われます。
広域災害から、いずれにしろ首都圏三千三百万人の生命と財産を守るためには、おっしゃるとおり、首都圏版のFEMAを立ち上げることが必要であると思いまして、さきの七都県市の首脳会議でその構想を提案しまして、専門家に依頼してつくったドラフトを提示しまして、きのうも木内議員からの提案がありましたが、今後、やはり常設の組織をつくって、持ち回りではなくて、こういった機能というものを首都圏のために確保していくことが必要だと思っております。
ことしのビッグレスキューで、九月の実動演習の前に、七月に、いわゆる図上演習として――図上といっても、何も紙を広げてやるのではなくて、オフィスからオフィスに情報を伝達することで、一つの架空の災害を各箇所に幾つか設定しまして、それにどう対処するかということを、主にテレビと電話で連絡し合ってやりましたが、そういう連絡の機能というのはいかに大切かということ、例えば、そういう災害に及んで、どこに電話をしたらいいかということすら今まで確認されていなかったものが固定されました。そういうことから始めて、私は、一刻も早く、国に先んじてでも、この首都圏のためのFEMAというものを確立し、機能させることが肝要だと思っております。
その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔知事本部長事務代理次長三宅広人君登壇〕
〇知事本部長事務代理次長(三宅広人君) 首都圏版FEMAについてのご質問にお答えいたします。
首都圏版FEMAの具体化に向けては、関係機関との協議や関連する法制度の見直しなど、さまざまな課題がございます。都といたしましては、早急に庁内に検討、調整のための専管の体制を整備するほか、ご指摘の課題も含めて七都県市の場に提起し、合意を得ることができるよう努めてまいります。
また、この夏、関係機関と連携して東京都が実施しました図上訓練は、情報ネットワークを強化する上で有意義でありましたので、今後、七都県市や自衛隊も加わった大規模かつリアリティーの高い図上訓練を共同で実施することを検討しております。これらの取り組みを通じて、首都圏における総合的な危機管理体制の充実を図ってまいります。
〔福祉局長前川燿男君登壇〕
〇福祉局長(前川燿男君) 福祉改革に関連しまして、三点のご質問にお答えいたします。
まず、福祉サービスの事業主体の多様化についてでありますが、福祉の分野において、質の高いサービスを十分に供給していくためには、NPOや民間企業など多様な事業主体をサービスの提供者として参入させ、活発な競い合いを実現することが必要であります。
都は、こうした観点から、今年度、認証保育所制度を創設いたしましたが、今後、他の福祉分野におきましても、一層の施策展開を図っていく考えでございます。お話しの痴呆性高齢者グループホームにつきましても、その整備促進を図るため、来年度から民間企業への整備費補助を都独自に実施する方針でございます。
こうした取り組みにより、福祉分野における参入障壁を克服し、利用者本位の福祉の実現に向け、一層努力をしてまいります。
次に、サービス評価と情報提供についてでありますが、利用者本位の福祉を実現するには、第三者の目でサービスを客観的に評価をし、その結果を都民に幅広く提供していく仕組みをつくることが重要であります。そのためには、信頼できる評価機関を数多く育成するとともに、評価結果を取りまとめ、わかりやすい形で都民に提供していくことが必要でございます。
こうした観点から、都は、来年度、評価のレベルを確保することを目的として、中立的な機関である評価サポート機構(仮称)を設置し、評価機関の認証や評価者への研修などを実施する方針でございます。また、これとあわせて、ITを活用した総合的な情報提供の仕組みを構築してまいります。
最後に、地域における利用者保護の仕組みについてでありますが、痴呆性高齢者や障害者が、地域の中で安心して生活できるようにするためには、福祉サービスに関するさまざまな相談、苦情、権利侵害などに的確に対応できる仕組みを整備することが重要な課題でございます。こうした需要は、身近な地域で総合的、一体的に受けとめることが不可欠でありますが、現実には、区市町村や社会福祉協議会など複数の機関がそれぞれ個別に取り組んでいるのが実情でございます。
都としては、今後、こうした現状を改め、利用者からの相談などにワンストップでこたえられるよう、総合的な利用者保護の仕組みづくりに取り組む区市町村を支援していく方針でございます。
〔総務局長大関東支夫君登壇〕
〇総務局長(大関東支夫君) 多摩の市外局番についてお答えいたします。
多摩の市外局番の統一化を図るため単位料金区域を一本化することは、住民の要望に沿うものと考えますけれども、その実現に当たりましては、通信事業者の経営上の問題や法律改正の課題もございまして、国等において総合的な検討が必要であると、このように認識しております。
都といたしましては、IT革命がもたらす電話サービスをめぐる環境の変化などを踏まえつつ、多摩の市町村との密接な連携のもとに、国や通信事業者に強く働きかけてまいります。
〔都市計画局長木内征司君登壇〕
〇都市計画局長(木内征司君) 多摩都市モノレールについての二点のご質問にお答えします。
まず、会社の経営努力についてでございます。
多摩都市モノレール株式会社では、利用者の拡大や増収を目指しまして、通学定期の割引率の拡大、一駅区間の運賃の百円への引き下げ、さらには企画乗車券の販売等に努めてまいりました。
また、動物をデザインした車両に加え、この十一月からは、車体を利用した広告の第一号として、ラッピングモノレールの運行を始めるなど、運賃以外の面においても増収に努めてきたところであり、今後とも、このような経営改善の努力を会社に求めてまいります。
次に、箱根ヶ崎延伸の事業化の取り組みについてでございます。
本路線につきましては、ご指摘のとおり、運輸政策審議会答申で位置づけられているほか、測量や環境予測など各種調査を実施してまいりました。加えて昨年からは、都、沿線の二市一町、会社で構成する計画調整会議において、最新のデータに基づいた輸送需要やこれに対応した運行計画、さらには適正な規模の施設や設備の計画等について論議をしているところでございます。
今後、会社の厳しい経営環境を踏まえつつ、事業採算性や導入空間の確保策を含め、さまざまな角度から検討を進めてまいります。
〔衛生局長今村皓一君登壇〕
〇衛生局長(今村皓一君) 保健サービスについて、三点のご質問にお答えいたします。
まず、多摩地域の保健サービスの再構築についてでございますが、都は、去る十月二十五日の市長会及び翌二十六日の町村会において、その考え方等について説明をさせていただきました。これに対しまして、幾つかの市町村から、これまでの経緯であるとか保健サービスの確保に関する懸念等が示されたことについては、真摯に受けとめなければならないと認識しております。
今後、再構築の趣旨などにつきまして市町村に十分説明をいたしまして、ご理解を賜れるよう努めてまいりたいと考えております。
また、再構築に当たっての地域住民のメリットについてでございますが、住民に身近な対人保健サービス等を市町村が実施することで、地域住民が、保健、医療、福祉に関するサービスを一体的に受けられることとなり、利便性が向上するものと考えております。
また、都の保健所につきましては、再編することで、広域的、専門的、技術的業務を発展、充実させ、これらの面から市町村を支援するとともに、健康危機管理分野などにおきましては、機動性を一層発揮することができるものと考えております。このように、都と市町村との適切な役割分担と協力により、地域住民が効率的かつ質の高い保健サービスを受けることが可能となると考えております。
終わりに、村山大和保健所の建設についてでございますが、これまで地元東大和市のご協力を賜りながら、建設用地を確保するなど、その実現に向け、努力をしてきたところでございます。
その後、財政的な理由での建設凍結や、また、多摩地域の保健サービスの再構築を検討する中で、地元自治体等のご期待に沿えなくなった状況については、今後とも、十分にご理解が賜れますよう誠意を尽くして説明をしてまいりますとともに、地域における保健サービスの一層の向上に向けて支援をしてまいりたいと考えております。
都といたしましては、地元自治体との連携を一層強化し、多摩地域の保健サービスを総体として向上させていこうと考えております。
〔選挙管理委員会事務局長南靖武君登壇〕
〇選挙管理委員会事務局長(南靖武君) 電子投票制度に関する二点のご質問にお答えいたします。
まず、制度の評価についてですが、電子投票の導入により、有権者の投票意思が正確に反映されることや、迅速で正確な選挙結果が得られることのほか、投票のバリアフリー化に役立つなどの効果がございます。
なお、費用対効果や投票方法の一体性確保等の点から見て、本来的には国政選挙と地方選挙で統一的に導入されることが望ましいと考えております。
次に、都選挙管理委員会における検討状況ですが、平成十一年九月に電子投票制度検討研究会を設け、区市町村の職員もメンバーとして参画し、選挙を執行する立場から、実務面、技術面の検討を行っているところでございます。
昨年十一月に取りまとめました中間報告において、投開票事務の現状と電子投票制度の導入に向けた課題を整理いたしました。現在は、これらの諸課題を実現、解決するための具体的方策を検討しており、今年度末には最終報告として取りまとめる予定でございます。
今後とも、区市町村と連携を密にし、適切に対応できるよう努めてまいります。